大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台高等裁判所秋田支部 昭和30年(ナ)1号 判決

原告 小久保運義

被告 秋田県選挙管理委員会

補助参加人 吉沢耕悦

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は全部原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人等は「被告が昭和三十年五月二十六日附を以てなした同年四月二十三日執行の秋田県議会議員の一般選挙の仙北郡(大曲市の一部を含む)選挙区に於ける候補者吉沢耕悦の当選の効力に関する原告の異議申立を棄却する旨の決定は之を取消す、訴訟費用は被告の負担とする」旨の判決を求め、その請求の原因として、

第一、原告は昭和三十年四月二十三日執行の秋田県議会の議員の一般選挙の仙北郡(大曲市の一部を含む)選挙区に於ける選挙人であるところ、右選挙区の議員定数は七名にして、訴外小松武文、原龍一、小山田四郎、鬼川誠、大野忠右エ門、沢口フク、阿部正一、梁田正次郎、龍輪二郎、佐藤文之助、佐藤隆喜、深浦宗寿、藤原熊蔵、今野直治、田口芳郎及び補助参加人の十六名が立候補し、同月二十四日開票の結果、選挙会に於て補助参加人の有効投票数は六、二六六票で最下位当選者、候補者田口芳郎の有効投票数は六、二五一票で最高位落選者と決定し、同月二十六日当選人決定の告示がなされた。しかし原告は右決定を不服とし同月二十六日被告委員会に対し、補助参加人の当選の効力に関し異議申立を為したところ、被告委員会は昭和三十年五月二十六日右異議申立を棄却する旨の決定をなし、その決定書は翌二十七日原告に交付された。

第二、しかし、

(一)  選挙会のなした候補者田口芳郎の前記有効投票数の決定は誤算に基ずくものであつて、選挙会に於て右候補の有効投票となした投票の数を精確に計算すると六、二五三票である。

(二)  次に補助参加人の有効投票中には別紙第一目録記載の如き投票が存するのであるが、右投票は次の理由により補助参加人の得票数より控除せらるべきものである。すなわち

1乃至7の投票二十三票は、いずれも本件選挙と同時に執行せられたる秋田県知事選挙に於ける知事候補者古沢斐の姓又は姓名を記載したるものであつて無効である。

8乃至16の投票五十五票は、いずれも右知事候補者古沢斐の姓と補助参加人の名とを混記せるものであつて無効である。

17乃至19の三票は、候補者沢口フク又は候補者佐藤文之助に対する有効投票である。

20の投票は、補助参加人の姓と候補者龍輪二郎の名を、21の投票は候補者今野直治の姓と補助参加人の名を、22及び23の投票は補助参加人の姓と候補者原龍一又は候補者佐藤隆喜の名をそれぞれ混記せるものと認められるから、いずれも無効である。

24乃至41の各投票は、いずれも候補者でない者の姓又は姓名を記載したる無効の投票と認められ、右36の投票は、補助参加人の長男吉沢悦郎の姓名を、右41の投票は補助参加人の二男吉沢耕治の姓名を、各記載したるものである。

42の投票は前記知事選挙の候補者鈴木清の姓と補助参加人の名とを混記せるものと認むべく、仮りに然らずとするも候補者の何人の氏名を記載したるかを確認し得ないものであつて、無効である。

43及び44の各投票は、いずれも候補者田口芳郎の名を「ヨシロ」と記載せんとして誤記したものと認められるから、右田口候補の有効投票となすべきである。仮りに右各投票の第三字がいずれも判読不能なりとすれば、候補者の何人を記載したかを確認し難いものとして無効である。

45 46 47の三票は、いずれも補助参加人の姓の上部に「」、「ニ」、「ケン」の字が記載せられあり、又、48乃至51の四票は、いずれも補助参加人の氏名の記載以外に「。」、又は「、」の記載あるもの、であつて、候補者の氏名の外、他事を記載した無効の投票である。殊に右45及び47の投票については「」又は「ケン」の記載が議員又は県議を意味するものとしても補助参加人は本件選挙当時議員又は県議でなかつたのであるから職業の附記と解することはできない。

52の投票は「よしろ」と判読できるから、田口候補の有効投票である。仮りに第三字が判読困難とするならば、「よしろ」と記載せんとしたものか、補助参加人の姓を誤記したるものかを断定できず、したがつて候補者の何人を記載したかを確認し得ないものである。

53乃至59の七票は、いずれも記載文字が判読できず、候補者の何人を記載したかを確認し難いものである。右58の投票は第一字は「吉」と判読できるも、第二字は「誠」の当字なるやも計り難く、候補者中鬼川誠なる者があるから、同候補者への投票との区別困難である。

60の投票は、第一字より第三字まではヨシザと記載されていること明らかであるが、第四字は到底「ワ」或は「ハ」と判読できない。むしろ「ヨシザワヘ」と記載しようとして、「ワ」の字を脱落し「ヘ」を「ヱ」と誤記したものと認められるから候補者の姓の外他事を記載したものと認むべきである。

61の投票は、補助参加人の姓の外「」なる他事を記載したるか或は補助参加人の姓の下に前記知事候補者古沢斐の「斐」の字を記載せんとしてその難解なるところより中途に於て中止したものと認められるから、無効である。

(三)  更に選挙会に於て無効票と決定した投票中に別紙第二目録記載の如き投票が存するが、右投票は、いずれも候補者田口芳郎の有効投票となすべきである。すなわち、

1、3、7及び8の投票は、いずれも「タテツ」の誤記と認められ、したがつて右各投票並びに2、4、6、9乃至13の各投票は、いずれも田口候補の家名若しくは通称の「田口鉄蔵」又はその略称「田鉄」を記載したるものである。田口候補は田鉄産業有限会社の代表取締役社長の職に在るのみならず、同候補の家は、当主たる実父田口鉄蔵に至るまで、代々「鉄蔵」の名を襲名すること既に五代に及び当主鉄蔵死亡の暁には同候補もまた当主田口鉄蔵の長男として「鉄蔵」を襲名すべき運命にあるところから、本件選挙区における一般の慣習として「田口鉄蔵」又は略して「田鉄」とは田口鉄蔵家の家名と化しており、社会生活上田口鉄蔵家の家族の一員でも「田口鉄蔵」又は「田鉄」と呼称され、右家名は更に当主田口鉄蔵の長男である田口候補を呼ぶ通称としても一般に使用されているものである。したがつて前記各投票は田口候補の属する家の家名でありしかも田口候補の通称を記載したものと認められるから、同候補の有効投票となすべきである。尤も本件選挙の投票当日、田口候補の実父田口鉄蔵は角館町々長選挙に立候補届出中のものであつたが、該選挙は昭和三十年五月四日執行せられたるものにして本件選挙と同時に執行せられたるものではないから、右各投票は町長候補たる田口鉄蔵に投票する意思の下に記載せられたと認むることはできない。

5の投票は、「田鉄」の誤記か又は「田口」と書く意図の下に田口と書き更に「口」のチの音を送仮名の意味にて「チ」と記載せんとして「テ」と誤記したるものと認められるから、いずれにしても田口候補の有効投票である。

14の投票は田口候補の名芳郎の「郎」の字を「雄」に誤記したものと認められる。

15の投票は、田口候補の姓名の上に同候補が本件選挙当時秋田県議会議員であつたから、右職名を略して「県議」と附記したるものである。

16の投票は、第一字は「田」を「谷」に誤記し、更に「芳」の字を「ヨ」と音読するものと誤解しその下に「四」の字をつけ加えたるものにして、此の投票の記載者は「芳四郎」を以て「よしろう」と解したものと認められるから田口候補へ投票する意思を有すること明白である。

17乃至19の投票は、「た口」又は「タ口」と記載したる上「口」の字の第二音「チ」を送仮名の意味にて書加えたるにすぎず、田口候補の有効投票となすべきである。

20及び21の投票は、いずれも第一字は「タ」、第二字は「口」と判読できるから、田口候補の有効投票である。

22及び23の投票は、いずれも「タグチ」と記載せんとして誤記したるものと認められる。

24の投票は「たぐち」と判読し得るものであり、

25の投票は「芳ロ」と判読し得るから田口候補の名を記載したものと認められる。

26の投票は「田口」と記載し更に田口候補の名を記載するに当り、当字を以て「四四郎」(よしろう)と記載せんとして、「四」の一字を脱落したものと認められるから、田口候補の有効投票と解すべきである。

27の投票三票は、いずれも「田口」の誤記と認められ、他の候補者中「田中」又は之に類似の姓を有するものがない。

26の投票は「ヨスロ」と記載すべきを「ロ」の字を脱落したものであり、

29の投票は「ヨスロ」と記載せんとして第三字をタと誤記したものと認められる。

30の投票は「ヨシロ」と記載せんとして第三字をダと誤記したものと認められる。

31の投票は、第三字はヨシロの三字を一箇所にまとめて記載したるものにして「田口ヨシロ」と判読できるし、又「田口チ」なる記載と同様「田口治(タクジ)」と「口」への送仮名と解せられる。

32の投票は、「ヨシロ」の発音を「リシロ」と誤りたるか又は第一字は「よ」の字の誤記と解せられる。

33の投票は、第一字は一面塗抹されておるが、精査するときは「口」の字が記載せられていたことが微に窺われ、「口田」と記載したるを「口」の一字は折畳の際墨汁のため塗抹せられたことが窺い得るから、田口候補の有効投票である。

34の投票は、田口候補の名を片仮名にて「ヨシロ」と記載すべくして第三字「ロ」の字を「」とまで記載し第三画を書き忘れたるものと認められる。

35の投票は「×」の記載は他事を記載したものではなく田口候補の名を記載せんとして「芳」の字の草冠の左側「×」を記載したが、芳の字の難解なるため、そのまゝ中止し田口と記載したものと認められる。

(四)  更に候補者沢口フクの得票中に「田口」と記載の投票一票存するが、右投票は田口候補の有効投票なること明白である。

されば候補者田口芳郎の得票数は六、二九九票、補助参加人の得票数は六、一三六票となり、候補者田口芳郎を以て最下位当選者、補助参加人を次点者となすべきこと明白であるから、被告委員会のなした前記決定は違法にして取消さるべきものである、と述べ

第三、被告委員会の主張に対し、田口候補の有効投票中に別紙第三目録記載の各投票が、無効投票中に別紙第四目録記載の各投票が各存すること及び本件選挙当時角館町内に田口四郎なる者が存し同人が同町議会議員であつたことは認める。右各投票については次の通り主張する。

(一)  別紙第三目録記載の投票について。

1乃至11の投票は、いずれも田口候補の有効投票と解すべきである。本件選挙に於ける投票中田口候補の名を四四郎、与四郎、吉郎、由郎、義郎、善郎、史郎或は4四郎と多岐に亘り当字を以て記載せられたもの多数あり、殊に芳四郎と態々不必要の「四」の字を附加するものあるなど、如何に田口候補の名が難解なるかを知り得るのであつて、前記投票中「田口四郎」なる投票は右の難解さより芳郎の芳の字を誤記したるか又は「田口四四郎」と記載すべくして「四」の一字を脱落したものか或は「四郎」と記載して「よしろう」と音読すべきものと誤解して記載したるかの何れかに該るものと認むべきであつて、被告委員会主張の如く氏名の混記と認むべきではない。本件選挙当時角館町議会議員の選挙は行われておらず、したがつて、右田口四郎は本件選挙当時自己の選挙運動をなしていたものでもなく又角館町議会議員の数は約八十名の多きに上るにかゝわらず、独り田口四郎の氏名だけが記載せられたというが如き特段の事情もないのであるから、右各投票は田口候補の名の難解なることゝ選挙人の知識の浅薄なることによる単なる誤記、脱字と認むるを相当とする。このことは本件選挙の投票中に「田口熊蔵」「田口耕悦」、「田口文之助」などと記載せられたる投票が殆んどなく独り「田口四郎」と記載の投票のみが非常に多い事実からみても首肯し得るところである。

12の投票、此の投票の第三字は片仮名の「チ」ではなく、数字の「4」と判読すべきものであつて、「田口4四郎」と田口候補の名を当字を以て記載したるものと認め、同候補の有効投票と解すべきである。

13乃至19の投票は、すべて「田鉄」(たてつ)と判読できるものであつて、前記第二の(三)に於て主張した如く、いずれも田口候補の有効投票となすべきである。

20の投票は、第一字は「田」の字の第四画「―」を脱書したもので、「田」の字の誤記と認めるべきである。

21の投票は「タグチ」と判読できる。

22の投票は、第一字「」は「田」の誤記、第五字は運筆は拙劣ではあるが「ロ」と判読でき、したがつて此の投票は「田口ヨシロ」と判読できる。

23の投票は「タくう」と判読できるものであつて、「田口」をよく「タグ」と呼称するところから、右呼称を記載せんとして語尾を長くするため「う」を附加し「く」に濁点を忘れたものと認められるから、田口候補の有効投票と解すべきである。

24の投票、この投票は第一、二字は明白に「タ口」と判読でき第三字及び第四字は抹消したるものと認められるから田口候補の有効投票となすべきである。

25の投票は、その記載文字の拙劣な点より考うれば「田テツ」と記載する意図の下に第一、二字を誤記したものであること明白であり、別紙第二目録記載1の投票につき述べたと同一理由により田口候補の有効投票となすべきである。

26の投票は「タテチ」と判読でき、その効力については右25の投票と同じである。

27の投票は「田口て」と判読できるから、田口候補の有効投票である。

28 29 30の投票は、記載者が文盲に近いため、「田口」と記載しようとして漸く「田」の字のみを記載して中止したものと認められるから、田口候補の有効投票である。

31の投票は第一字は片仮名の「タ」第二字は漢字の「口」であつて「タ口ツ」と判読できるものであつて、第三字「ツ」は口の字に送仮名を附したるものと認められるから、田口候補の有効投票である。

32の投票は「タ口」と判読できる。

33の投票は「たく口」と判読できるものであつて第二字「く」は文盲に近いため加えたるものと認められ、田口候補の有効投票である。

34の投票は「たクチヨス」と判読し得るもので、田口候補の有効投票である。

35の投票は「たぐちよしろ」と判読できるから、田口候補の有効投票である。

36の投票は、筆跡の拙劣幼稚なる点より考えると、「田」の字を誤記したものと認めるべきである。

37の投票は第一乃至第三字は「タクツ」と判読できツの下部の「ゞ」は第二字の「ク」に附すべき濁点を第三字「ツ」の下部に誤つて三点記載したものと認められるから、田口候補の有効投票である。

38の投票は「タテツ」と判読できるから、前記の如く田口候補の有効得票と解すべきである。

39の投票は「タグンヅ」と判読でき、田口候補の氏を訛つて「ン」の字を加えたものである。

40の投票、この投票は被告委員会主張の如く不真面目な記載ではなく、文字を造花的に、構図的に、配置して記載せられており、読む人に於て非常に好感を以て判読し得るものにして有効なること勿論である。

41の投票は色素は十分ではないが非常に固い鉛筆(4H程度)にて記載されているものであつて色素が附着している。

42の投票、この投票の「ヘ」の記載は、この投票の記載者の何人かを暗示するための他事記入とは認め難く、吾人の社会生活より来る習性が不用意の内に記載せられたものと認めるべきである。他事記入の投票を無効となす法の精神は選挙の秘密すなわち投票が選挙人の何人によつてなされたかの暗示を生ずる虞を防止する目的にでたるものであるから、斯る虞なき「へ」の記載を以て有意の他事記載となすべきではない。

43の投票、この投票の田口候補の氏名の上部に記載せられた「日本」は、田口候補が日本民主党の公認候補であつたため、右党名を附記せんとしたが投票用紙の候補者氏名欄に全部書き切れぬため、「日本」とまで記載して中止したるものと認められるから、所属党名の附記であつて他事記載ではない。

44の投票は田口なる姓の記載が明瞭であり「りやだる」なる名を有する候補者は存しないから、田口候補の有効投票である。

45の投票は田口候補の有効投票である。

46の投票は、「たぐちさん」と音読でき「たろうさん」と音読するのは曲解である。

47の投票が田口候補に対する有効投票でないことは認める。

48の投票は筆跡の拙劣幼稚なる点よりみて、第一字は「田」の字を誤記したものであり、第二字は漢字の「口」と認められるから、田口候補の氏を誤記したものであつて、いずれも同候補の有効得票と解するのが相当である。

(二)  別紙第四目録記載の投票について。

1の投票、「ソウゼン」と「コーイチ」とは全然類似性なく又候補者中に深浦宗寿なる者があり、「宗寿」を「ソウゼン」と誤読し同人の名を記載したものと認められるから、無効である。

2及び3の投票は、「吉沢」の誤記ではなく吉沢姓と別個なる土沢なる人の姓を記載したものである。若し「吉」の字の口を書き落したものと解することができるとせば同時に「古」の字の「凵」を書き落したものとも解せられるから「古沢」の誤記と認めて、無効とすべきである。

4の投票、被告委員会主張の如く「吉沢」と書いて之を抹消し更に「イシザワ」と書きたる点を考えれば、補助参加人への投票とは認め難く「石沢」なる姓の人の姓を記載したものと認むる以外になく、したがつて候補者でない者の氏を記載したる無効の投票である。

5の投票は到底判読不能にして無効である。下段の四字を強いて「こうえじ」と判読するとしても上部三字は「ふしら」と判読でき、したがつて候補者藤原熊蔵を「ふしら」と誤記したる上、補助参加人の名を混記したとも認められるから、候補者の何人を記載したるかを確認し難いものといわなければならない。

6及び7の投票は、いずれも判読不能であつて無効である。

8の投票は被告委員会主張の如く「ヨシザワ」と記載すべくして「ザ」を脱落したものではなく、「ヨシロ」の誤記と認め田口候補の有効投票となすべきである。

9乃至12の投票についての被告委員会の主張は、いずれも否認する。

被告訴訟代理人は原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする旨の判決を求め、

第一、答弁として、原告主張の請求原因事実中第一の事実、第二の(一)及び(四)の事実、補助参加人の有効投票中に別紙第一目録記載の各投票が存すること、無効投票中に別紙第二目録記載の各投票の存すること及び本件選挙と同時に行われた秋田県知事選挙の候補者に古沢斐なる者が存したことは認める。原告主張の各投票については次の通り述べる。

(一)  別紙第一目録記載の投票について。

同目録記載の1、4、5、7、17、18、19、20、22、42、43、44の投票二十八票については原告主張の如く、いずれも無効なることを争わない。

2及び3の投票は、いずれも「吉沢」と判読できるから補助参加人の有効投票である。

6の投票は、第一、二字は明白に吉沢と判読できるから、補助参加人の有効投票である。

8の投票四十七票、古と吉とは一画違いで極めて類似しておるから、「吉」を「古」と誤記したるものと考えられるのみならず、補助参加人の名「耕悦」は特殊性があるから、本件選挙と同時に行われた秋田県知事選挙の候補者古沢斐に対する投票とは到底考えられず、補助参加人に対する有効投票と解すべきである。

9乃至16の各投票は名に該る部分の記載が、補助参加人の名と同音又は極めて類似するから、古沢の記載は吉沢の誤記と認められ、いずれも補助参加人の有効投票と解すべきである。

21の投票、補助参加人は今野家に生れたが吉沢家の養子となつたものであるから、此の投票は、補助参加人の旧姓を記載したものであつて、本件選挙の候補者である今野直治の氏と補助参加人の名とを混記したものと認むべきではない。

23の投票は「吉沢コーキ」と記載されている。補助参加人の名は一般人には難解難読の文字であつて記憶しがたい。吉沢コーまで書いてあとをごまかしたものであり、補助参加人に対する有効投票であることを確認し得る。

24の投票、此の投票はいずれも吉沢と記載すべきを土沢と誤記したるものと認むべきである。

25の投票、此の投票の第二字は「ネ」ではなく「シ」の字を書いたものであるが次の「ザ」の濁点が右「シ」の字に接近して附せられたものと認められ、したがつて「ヨシザワ」と判読できるものである。

26の投票、此の投票は「ヨシサワ」と記載すべくして、「シ」を「コ」に誤記したものと認むべきである。

27の投票、此の投票は「よしざわ」と判読できる。

28の投票、此の投票は「ヨシザワこうえつ」の誤記と認むべきである。

29の投票、此の投票は「ヨシザワ」の誤記と認むべきである。

30乃至33の投票、これらの投票は、補助参加人の名を正確に記憶しないために誤記したものと認められ、各該当の名の候補者が存しないから、いずれも補助参加人に対する有効投票と認むべきである。

34乃至40の投票、これらの投票は補助参加人の氏名又は名を誤記したるものと認められ、他にこれらの投票に記載せられた氏名と同一又は類似の候補者が存しないから、いずれも補助参加人の有効投票となすべきである。

41の投票、此の投票は、「吉沢コーイヂ」と記載せんとして「吉沢コヂ」とつまつて記載したるものと認められ補助参加人の有効得票と解すべきである。

45の投票、此の投票の第一字「」は議員の略と解せられるから有効である。

46の投票、此の投票の第一字「ニ」は「吉」と書こうとして「ニ」まで書いたが漢字に自信なきため中止し改めてその下にヨシサワと記載したるものであると認められる。

47の投票、第一、二字の「ケン」は県議の意と認められる。

48乃至51の投票、これらの投票に附記せられた「。」、「、」、「・」は、いずれも一般の慣例による句読点の附記と認められ有意の他事記入とすべきではない。

52の投票、此の投票の第三字は「わ」と判読でき、したがつて「よしさわ」と記載すべくして「さ」の一字を脱落したものと認められる。

53の投票、此の投票は「コ一」と記載されていること明らかであるから、補助参加人の名を略記したものと認められる。

54の投票、は明らかに吉沢耕悦と判読できる。

55の投票、此の投票の第一字は明らかに吉と判読でき、第二字は冗書あるも沢を書こうとしたものであることは明らかである。

56の投票、は吉沢の誤記と認められる。

57の投票、此の投票は、その記載者が無学のため、第二字は「澤」と書こうとして傍を誤つたもの、第三字は「耕」を書こうとして傍を誤まつたもの、第四字は「悦」の字を忘れてごまかしたものと認められる。

58の投票、は第二字は「澤」と書こうとして傍を誤記したもので吉澤と判読すべきものである。

59の投票、この投票は、投票用紙を逆にして記入したものであり、「コーイチ」と記載せんとして無学のためチの字を書きあやまつたものと認められ、補助参加人の名を記載したものと解すべきである。

60の投票、此の投票は、無学のため第四字は「ワ」の字を誤記したか或は「ワ」の字を脱し「コ-一」と書こうとして誤つたものと認められる。

61の投票、此の投票の第一、二字は明らに吉沢と記載せられており、その下に「耕悦」と書きかけて中止したものであつて他事記入とは認められず又「斐」の字とは何の関係もないものである。

(二)  別紙第二目録記載の投票について。

1乃至13の投票、これらの投票は、いずれも候補者田口芳郎の実父田口鉄蔵の氏名又はその略称である「田鉄」を記載したものと認むべきである。右田口鉄蔵は後記主張の如く本件選挙の数日後に執行された角館町長選挙に立候補し「田口鉄蔵」又は略称「田鉄(タテツ)」として盛んに選挙運動をなしていた地方的著名人であるから、「田口鉄蔵」又は「田鉄」と音読できる右各投票は、すべて候補者田口芳郎に対する投票と認むべきではない。

14 15 16の投票、これらの投票が原告主張の如く候補者田口芳郎の有効投票となすべきものなることについては争わない。

17乃至24の投票、これらの投票の記載は、いずれも判読不能にして、候補者の何人を記載したかを確認し難いものである。

25の投票、この投票の記載は到底「芳郎」と判読し得ない。

26の投票、候補者田口芳郎の氏と候補者小山田四郎の名を混記したものと認むべきである。

27の投票、候補者でない者の氏を記載したものと認むべきである。

28の投票、何人に対する投票か不明のものである。

29 30の投票、いずれも「ヨスロ」の誤記とは認められない。

31の投票、田口候補の有効投票なることは認める。

32の投票、何人に対する投票なるか不明である。

33の投票、此の投票に記載された「田」の字の上部に墨痕にて塗り潰されたものがあるが、同所に文字の記載があるとは到底確認し難い。しかして候補者中に小山田、梁田の如く田の字のつく氏を有するものがあるから、此の投票は田口候補に対する有効投票とは認め難い。

34の投票、此の投票の第三字は明白に「ワ」と判読できるから、「ヨシザワ」と記載せんとして「ザ」の一字を脱落したものと認むべきである。

35の投票、此の投票の記載中「×」は原告主張の如く草冠を書かんとしたものとは認められないことは一見して明らかである。この記載は所謂罰点と認められるから、他事を記載した無効のものである。

第二、田口候補の有効投票中、別紙第三目録記載の投票が存するが右投票はいずれも次の理由により無効となすべきである。

同目録記載の1乃至12の投票、これらの投票は、いずれも候補者田口芳郎の氏と候補者小山田四郎の名とを混記せるものと認められるから、何れの候補者に投票したものかを確認し難いものである。しかのみならず、本件選挙当時角館町には「田口四郎」なる者が実在しており、同人は角館駅前に於て新聞売捌業を営み且つ又同町議会議員の職に在つて活溌なる社会活動を行つている知名の人物である。右各投票は右実在人の氏名を完全明確に記載しており、且つ右投票中二十二票は、いずれも角館町開票区における投票であることに鑑みれば、該投票は右実在の町議会議員田口四郎に対する投票であることの公算大である。此の点からしても右各投票は、いずれも無効となすべきである。

13乃至19の投票、「田鉄」(たてつ)というのは原告主張の如く田口家の家号ではなく候補者田口芳郎の実父田口鉄蔵の略称であつて、田鉄と単に言えば右田口鉄蔵を指称するものである。田口候補は右田口鉄蔵の家の一員であるから「田鉄」とあれば田口候補を指すとの解釈は許されない。投票はあくまで立候補者個人に対するものでなければならない。右田口鉄蔵は本件選挙の直前まで角館町町長の職に在り、本件選挙の数日後に行われた同町町長選挙に立候補し選挙運動中の者であつたから、これが本件選挙に対する影響は看過し難いものがある。右田口鉄蔵は本年六十四才生粋の角館人で幾多の事業を主宰し殊に檜木内村方面では巨大なる森林事業を経営し秋田県森林組合理事長等の公職に在り、角館町及びその附近に於て「田鉄」として昭和四年先代鉄蔵名を襲名してより三十年に垂々とする閲歴を有し、現在なお壮者を凌ぐ元気をもつて東奔西走の活動を続けており、その名の喧伝されていることは田口候補の遠く及ぶところではない。したがつて選挙人中には田口芳郎の立候補を右田口鉄蔵の立候補と錯覚していたものも僅少でなかつたと思われる。田口芳郎個人を指称する場合に「田鉄」ということはあり得ないのである。したがつて右各投票は田口候補に対するものではなく、実在の田口鉄蔵に投票する意思を以て記載せられたものと認むべきであつて、いずれも無効となすべきである。

20乃至37の投票、これらの投票は、すべて文字の体をなさず、判読困難であつて何人に対する投票か確認し難いものである。

38、39投票、これらの投票は、いずれも何人に対する投票か確認し難いものである。

40の投票、この投票の記載は不真面目であつて、真に田口候補を選挙する意思であることが認められないから、無効である。

41の投票、この投票は色素が附着していないから、候補者の氏名を自書したものとはいうことができない。

42、43、44の投票、これらの投票は候補者田口芳郎の氏名又は氏に「へ」、「日本」或は「りやだる」なる他事を記載したもので無効である。

45の投票、この投票の記載は無意味であつて何人の氏名を記載したか確認できないものである。

46の投票、この投票の記載は「太郎さん」と読む外ない。したがつて候補者でない者の名を記載したものと認むべきである。

47の投票、この投票は候補者龍輪二郎に対する投票と認むべきである。

48の投票、この投票は「四ロ」と読むべく、したがつて候補者小山田四郎の名を記載したるものと認むべきである。

第三、無効投票中に存する別紙第四目録記載の各投票は、いずれも補助参加人の有効投票となすべきである。すなわち

1の投票は第一字より第四字までは「ヨシザワ」と明記され、第五字より第八字までの「ソウゼン」は補助参加人の名の音に近似性があり、又候補者中に「ソウゼン」という名の者がないから補助参加人に対する有効投票と認むべきである。

2、3の投票、これらの投票の第一字は、いずれも「吉」の字を誤記したものと認めるべきである。

4の投票、この投票は吉沢と書いて抹消し傍らに「イシザワ」と記載されているものであつて、「ヨシザワ」と書くべくして、「ヨ」の字を訛つて「イ」と記載したものと認めるべきである。

5の投票、この投票の記載文字は運筆拙劣で第三字は明らかではないが、「さ」の誤りとも認められるが、第一、二字は「よし」第四字以下は「こうえじ」と各判読できるから補助参加人の氏名を記載したものと認むべきである。

6の投票は「吉澤」と判読できる。

7の投票は「吉さわ」と判読できる。

8の投票は「ヨシワ」と判読でき、「ヨシザワ」の「ザ」の一字を脱落したものと認められる。

9の投票は、「ふるさわこえち」と判読でき、補助参加人の名と類似するから補助参加人に対する投票と認めるべきである。

10の投票は「よしだめ」と判読できるが、第三字「だ」は「ざ」の、第四字「め」は「わ」の各誤記と認められる。

11の投票は、第二字は判読できないが、第一字は明らかに「吉」であり、他に吉の字のついた候補者がないから、補助参加人に対する投票と認むべきである。

12の投票は、第一字はヨと判読でき、第四字「バ」は「ワ」の誤記と認められるから、補助参加人の有効投票となすべきである。

第四、以上により補助参加人及び候補者田口芳郎の得票数を計算すると前者の得票数は六、二四八票にして、後者の得票数は六、一九一票であること明白であるから、補助参加人を最下位当選人、田口候補を最高位落選者となすべく、したがつて原告の異議申立を棄却したる被告委員会の前記決定は結局相当であつて、原告の本訴請求は失当である、と述べた。

被告補助参加代理人両名は

(一)  別紙第一目録記載の投票について。

1の投票十六票はいずれも補助参加人の氏の第一字「吉」を「古」と誤記したるものと認められるから、補助参加人の有効投票となすべきである。

2及び3の投票は、いずれも「吉沢」と判読できる。

4の投票は「ざ」の濁点あるところより補助参加人の有効投票と認むべきである。

5及び7の投票は、いずれも原告主張の如く無効と認める。

6の投票、第三字は「耕」の誤記と認められるから、補助参加人の有効投票である。

8の投票、これらの投票の第一字はいずれも「吉」の誤記と認められるから、補助参加人の有効投票となすべきである。

9及び10の投票は、いずれも補助参加人の氏名を誤記したものである。右10の投票の記載は補助参加人の氏名に極めて近似し、他に右記載の氏名と類似の候補者はない。補助参加人の子に「耕治」なる名を有するものあるが、同人は未成年者の学生であり本件選挙当時は選挙区内に居住せず、かつ未だかつて社会的に活動したことはない。

11乃至15の投票、これらの投票の第一字は、いずれも「吉」の字を誤記したるものと認められるから、補助参加人の有効投票である。

16の投票は参加人の氏名を誤記したること明らかである。

17、18、19の投票は、いずれも原告主張の如く他の候補者の有効投票であることは認める。

20の投票は原告主張の如き混記とは認められない。補助参加人の有効投票と解すべきである。

21の投票、今野は補助参加人の旧姓であり、この投票は、その旧姓を記載したるものであつて混記となすべきではない。

22の投票は「よしざわこウ一」と判読できる。

23の投票、この投票の「コーキ」の記載は補助参加人の名と音が似ているから、補助参加人の有効投票である。

24の投票は、いずれも「吉沢」の誤記である。

25及び26の投票は、いずれも「ヨシザワ」の誤記と認められる。

27の投票は「よしざわ」と判読し得る。

28の投票は「ヨシザワこうえつ」の誤記と認められる。

29の投票は「ヨシザワ」の誤記なること明らかである。

30及び31の投票、これらに記載せられた「ひとし」又は「ユキヲ」と類似の名を有する候補者が存しないから、補助参加人の有効投票である。

32の投票は「ヨシザワコウイチ」と記載せんとしてコウの二字を脱落し且つチをサに誤記したものと認められ、補助参加人の有効投票である。

33、34、35の投票は、いずれも補助参加人の名を各誤記したものと認められる。

36の投票、この投票に記載せられた「悦郎」なる名に類似する候補者なく、又悦は助補参加人の名の第二字と同一であるから、補助参加人の有効投票と認むべきである。

37、38、39、40の投票、これらの投票は、いずれも補助参加人の氏又は名を誤記したものと認められる。

41の投票は「吉沢コウエツ」と記載せんとして「コウエツ」を「コヂ」と誤記したものと認むべきである。

42の投票は補助参加人の氏名を誤記したものである。

43の投票、この投票の第三字は「沢」の誤記と認められる。

44の投票、この投票の記載は「ヨシサ」と判読でき、したがつて「ヨシサワ」と記載せんとして「ワ」の一字を脱落したものと認むべきである。

45乃至52及び56の投票、これらについては、いずれも被告委員会の主張と同一である。

53の投票、この投票に記載の「コ一」は「耕悦」と読み得る。

54の投票は、補助参加人の有効投票と認むべきである。

55の投票は「吉沢」と判読できる。

57の投票は「吉沢耕悦」の誤記であること明白である。

58の投票、第二字は「澤」の誤記であること明白である。

59の投票、この投票の記載は「コーエチ」と判読できるから補助参加人の名を記載したこと明らかである。

60の投票は「ヨシザワ」の誤記である。

61の投票は、「吉沢ツ」と判読でき、「吉沢コウエツ」と記載せんとして「コウエ」の三字を脱落したものと認められるから、補助参加人の有効投票である。

(二)  別紙第二目録記載の投票について。

12 4 5 6 8 9 10 11 12の投票、これらの投票は、いずれも田口候補の実父田口鉄蔵の氏名又はその略称たる「田鉄」を記載したるものであつて、候補者でない者の氏名を記載したる無効の投票である。

3、7、13、17乃至25、31、32の投票、これらの投票は、いずれも何人の氏名を記載したるか不明の投票であつて無効である。

14、15の投票は、いずれも田口候補の有効投票と認める。

16の投票、谷口なる姓の候補者なく、又、四郎は候補者小山田四郎の名を記載せるものと認められるから田口候補の有効投票ではない。

26の投票、これらの投票は、いずれも田口候補の姓と右小山田四郎の名を混記せるものであつて無効である。

27の投票は候補者でない者の姓を記載したる無効の投票である。

28の投票は「ヨスザワ」と記載せんとして「ザワ」の二字を脱落したものであつて、補助参加人の有効投票と認むべきである。

29、30の投票は、いずれも補助参加人の有効投票と認むべきである。

33の投票、「田」の字の記載のみでは他に小山田という姓の候補者が存するから、田口候補への投票と認め難いし、且つ他事記載ある無効票である。

34の投票は、「ヨシザワ」と記載すべくして「ザ」の字を脱落したものと認められ、補助参加人の有効投票となすべきである。

35の投票、この投票に記載の「×」は反対の表示とみられる他事記載であるから無効投票である。

(三)  別紙第四目録記載1の「ヨシザワソウゼン」と記載した投票は補助参加人の有効投票であること疑がない。

補助参加人の名の第二字「悦」は「税」の字と近似するために「コウゼイ」と呼ばれることがよくあり、「ヨシサワコウゼイ」と記載せんとして「ヨシサワソウゼン」と誤記したものである。

(四)  「田口鉄蔵」又はその略称「田鉄」は田口候補の属する家の家号でもなく又田口候補自身の通称でもなく、田口候補の実父田口鉄蔵の氏名であり、その略称であること明白である。仮りに「田口鉄蔵」又は「田鉄」が田口候補の家号であるとしても、家号なるものは氏名ではないから、家号のみを記載した投票は無効であること幾多判例の存するところであり、又家号を以てその家の世帯主以外の家族構成員の一員を指称する場合に於ても代名詞として使用されるということは首肯し得ないところである。候補者の氏名でない称呼のみを記載したるものは、その称呼が候補者個人の氏名に代替され、これにより候補者個人を他から判然と特定し、当該候補者以外の者を指称するものでないことが明らかな場合にのみ、之を有効と解すべきである。したがつて、かりに「田口鉄蔵」又は「田鉄」が田口候補の家号であり、しかも右家号が家族構成員の一人を指称する場合に於ても使用される慣例があるとしても、右家号の記載だけでは田口候補の家の世帯主である実父の田口鉄蔵を指すのか或はその家族の一員たる田口候補を指称するのか、将又右以外の家族構成員を指すのか、を特定し得ないから、結局「田口鉄蔵」「田鉄」又はこれらと音読できる投票は、いずれも無効と解する外はない。しかして又「田口四郎」又は田口四郎と音読できる投票は田口候補の氏と候補者小山田四郎の名を混記したもので候補者の何人を記載したかを確認し難いのみならず、被告委員会主張の如く実在する田口四郎に投票したものと容易に推認し得るところである。と述べた。

(証拠省略)

理由

原告主張の第一の事実、第二の(一)並びに(四)の事実、補助参加人の有効投票中に別紙第一目録記載の各投票が、候補者田口芳郎の有効投票中に別紙第三目録記載の各投票が無効投票中に別紙第二及び第四目録記載の各投票が、各存することは当事者間に争がない。よつて検証の結果を参酌しつつ、右各投票の効力を順次判断する。

(一)  別紙第一目録記載の投票について。

1の投票十六票は、いずれも「古沢」と記載せられていること明白な投票であるところ、本件選挙と同時に行われた秋田県知事選挙の候補者に古沢斐なるものが存したことは当事者間に争なく、右事実に本件選挙の投票中に右古沢斐の氏名又は右知事選挙の候補者であつた小畑勇二郎、鈴木清の氏、名または氏名を記載した投票が相当多数存している事実を考え合せると、明らかに「古沢」と記載してあるこれらの投票は、補助参加人の主張する如く補助参加人の氏の頭字「吉」を「古」と誤記したるものと断定することは到底困難であり、結局候補者でない者の氏を記載したものとして無効と解する外ない。

2及び3の投票、この各投票は、その記載文字は拙劣ではあるが、いずれも「吉沢」と判読できるから、補助参加人の有効得票であること勿論である。

4及び5の投票、これらの投票は明白に「ふるさわ」又は「古沢斐」と記載しあるものであるから前記1の投票について述べたと同一理由により無効となすべきである。

6の投票、この投票の第三字は「」と記載せられており、この記載は補助参加人の名とは全然類似性がなく、之は前記知事候補者古沢斐の名の字を誤記したるものであることは、その記載自体に照し明白である。したがつて、この投票は補助参加人の氏と、本件選挙と同時に行われた前記知事選挙の候補者古沢斐の名を記載したものと認められるから、補助参加人に対する有効投票と解することはできない。

7の投票、この投票の第一、二字は明らかに「古沢」と記載してあり、第三字は判読することができない。したがつて前記1の投票について述べたと同一理由により無効となすべきである。

8の投票、これらの投票は明らかに「古沢耕悦」と記載してあるものであるが、補助参加人の名「耕悦」は特種性があり、他の候補者中之に類似の氏名を有する者がないから補助参加人の氏を誤記したものと認めるのが相当である。もつとも本件選挙と同時に行われた秋田県知事選挙の候補者中に古沢斐なるものが存したことは前記の如くではあるが、これらの投票には補助参加人の名をも明記してあるのであるから、補助参加人へ投票するの意思が明白なるものとして、補助参加人に対する有効投票と解すべきである。

9、10及び16の投票、これらの投票は「古沢耕一」、「古沢耕治」又は「古沢幸一」と記載せられているが、候補者中これに類似する氏、名または氏名を称えるものがないから、補助参加人の氏名を誤記したものと認め同人の有効投票と解するを相当とする。もつとも本件選挙と同時に行われた秋田県知事選挙の候補者中に古沢斐なるものが存したことは前記の通りではあるが、これらの投票は右の如く、右知事候補の氏のみを記載したものではないし、又補助参加人の二男に「耕治」なる名の者がいるが同人は本件選挙当時は未だ満十六歳に達しないものであつたことは成立に争なき丙第九号証の記載及び証人吉沢耕悦の証言に照し明らかであるから、これらの投票が右知事候補者古沢斐又は補助参加人の二男吉沢耕治へ投票する意思を以て記載せられたものとなすことは適当ではない。

11及び12の投票、これらの投票は、第一、二字は「古沢」と記載されているけれども第三字以下は「耕えつ」又は「コウエツ」と記載してあつて補助参加人の名を記載したものであること明白であるから、前記8の投票につき述べたと同一理由により、いずれも補助参加人の有効得票と解すべきである。

13、14及び15の投票、これらの投票の名に該る部分の記載は補助参加人の名を誤記したるものと認められるから、前記8の投票につき述べたと同一理由により、いずれも補助参加人の有効得票と解する。

17、18、19の投票、これらの投票が、候補者沢口フク、又は同佐藤文之助への有効投票であることは当事者間に争がなく、当裁判所の判断も之と同様である。

20の投票、この投票は「吉沢二郎」と明らかに記載しあるものであつて、候補者中に龍輪二郎なる者が存することは当事者間に争ないのであるから、補助参加人の氏と右龍輪候補の名を混記したるものと認めるの外なく、候補者の何人を記載したかを確認し難い無効の投票となすべきである。

21の投票、この投票は明らかに「今野コウエツ」と記載されているものであり、候補者中に今野直治なる者が存することは当事者間に争がないのであるから、右今野候補の氏と補助参加人の名を混記したるものと認めるの外ない。補助参加人の旧姓が「今野」であつたことは原告の明らかに争わないところではあるけれども、候補者中に今野直治なる者が存する以上、この投票を以て補助参加人の旧姓を記載したるものとのみ断定しがたいから、右認定に反する被告委員会並びに補助参加人の主張は採用することはできない。

22の投票、この投票の第一字は「お」なるか「よ」なるか不明ではあるが、第五字以下は明らかに「リウ一」と記載してある。しかして候補者中に原龍一なる者が存することは当事者間に争ないところであるから、右第一字を「よ」と判読しても、結局候補者の何人を記載したかを確認し得ざるものとして無効と解する外はない。

23の投票、この投票は「吉沢コーキ」と判読し得るものであつて、その文字の稍拙劣なるところから考えると「吉沢コーエツ」の誤記と認められる。もつとも原告主張の如く候補者中に原龍一及び佐藤隆喜なる者が存することは当事者間に争ないころではあるけれども、「コーキ」と「リユーイチ」又は「リユーキ」とはその音感に類似性がないから、この投票は補助参加人の有効得票となすに差支えがない。

24の投票、この投票は、いずれも「土沢」と判読し得るものであるが、その文字の稍拙劣なる点より考えると、「吉沢」の誤記と認められる。しかして候補者中に「土沢」又は之に類似する氏を有する者がないから、この投票は、いずれも補助参加人の有効得票と解する。

25及び26の投票、25の投票は第二字は稍明瞭を欠くが「ヨネサワ」と判読できるものであり、又26の投票は「ヨコサワ」と記載せられているが、いずれもその文字の拙劣なる点より考えると、「ヨシサワ」と記載せんとして「シ」を「ネ」又は「コ」と各誤記したものと認められ、且つ「ヨネサワ」又は「ヨコサワ」と同一又はこれらに類似する氏を有する候補者が存しないから、右投票は、いずれも補助参加人の有効得票と解すべきである。

27の投票、この投票の第一、二字は「よし」、第四字は「わ」と各判読できるが、第三字は判読不能である。しかし第三字の記載をよく見ると、この投票の記載者は「ざ」の字を書こうとして相当苦心したる形跡を認め得るところであり、且つ他の候補者中に「よしわ」と同一又は之に類似の氏名を有する者が存しないから、この投票は補助参加人の氏を誤記したものと認め同人の有効得票と解すべきである。

28の投票、この投票は第一字乃至第五字は「ヨシザこう」と記載してあるが第六字目は何かの字を記載せんとして抹消したるようであつて、判読困難である。しかし記載文字の拙劣幼稚なる点より考えると、この投票の記載者は「ヨシザワこうえつ」と記載せんとして「ワ」の一字を脱落すると共に「こう」まで記載したが「え」の字を記載することができず、そのまま中止したるものと認められ、他の候補者中に「ヨシザこう」に類似する氏名を有する者がないから、この投票は補助参加人の有効得票と解すべきである。

29の投票、この投票はその記載文字の拙劣なる点より考えると「ヨシザワ」の誤記と認められ、他の候補者中に「ヨシバワ」の音に類似の氏又は名を有する者がないから、補助参加人の有効得票と解すべきである。

30及び31の投票、これらの投票は、「吉沢ひとし」、又は「吉沢ユキヲ」と明らかに記載してあるものであつて、候補者中「吉沢」の氏を称える者は補助参加人のほかには存しないが、「ひとし」又は「ユキヲ」は補助参加人の名「耕悦」とは全く類似性がないから、補助参加人の名を誤記したものとは到底認め難く、候補者でない者の氏名を記載したものとして無効と解すべきである。

32の投票、この投票は「ヨシザワウイサ」と記載せられているが、その筆跡の稚拙なる点より、補助参加人の名「耕悦」(こうえつ)を記載すべきを「コ」の字を脱落し、且「エ」を「イ」に、「ツ」を「サ」に各誤記したるものと認められるから補助参加人の有効得票と解するを相当とする。

33及び34の投票、33の投票は補助参加人の氏名と類似するものであり、34の投票は第五字は「ヨ」ではなく「コ」の字を記載したが運筆の途中に於て「コ」の字の中間に誤つて「、」が附着したものと認められるから「ヨシザワコウ一」と判読できるものであり、補助参加人の氏名に類似するものである。したがつて他に「コウシー」又は「コウ一」に類似する名の候補者なき本件に於ては、右各投票は、いずれも補助参加人の有効得票と認むべきである。

35の投票、この投票は第一、二字は「吉澤」と判読でき第三字は「来」と書いたが之を抹消しその横に「澤悦」と記載しあるものであつて、その文字の稍拙劣な点より見ると、この投票の記載者は「吉澤耕悦」と書くべくして「耕」の字を書き損じ誤つて「澤悦」と記載したるものと認められるから、補助参加人の氏名を誤記したるものと認め、同人の有効得票と解すべきである。

36、37、39、40の投票、これらの投票は、その字数、字形、音感等が補助参加人の氏名と類似しているからいずれも補助参加人の氏又は名を誤記したるものと認め、補助参加人の有効得票と解すべきである。

38の投票、この投票は「吉沢一」と記載しあるもので「一」の「」はその筆跡、運筆の具合から見て「恭」の字を誤記したるものと認められ、かく解するときは「恭一」はその音感に於て補助参加人の名「耕悦」(こうえつ)の訛音「こういつ」に相通ずるものがあり、且つ候補者中に「一」に類似する名を有するものがないから、補助参加人の氏名を誤記したものと認め、同人の有効得票と解するを相当とする。

41の投票、この投票は「吉沢コヂ」と記載せられているが、秋田県人には「えつ」の音を「いつ」、「いづ」又は「いぢ」と訛つて発音する者が相当多いことは顕著な事実であり、右事実に、この投票の筆跡の稍稚拙な点を合せ考えると、この投票の記載者は補助参加人の名「耕悦」(こうえつ)を訛り且つ、つまつて、「コヂ」と誤記したるものと認められ、又補助参加人の二男「耕治」は前記の如く本件選挙当時十六歳未満のものであり、候補者中に「コヂ」又は之に類似の名を有する者がいないから、補助参加人の有効得票となすべきである

42の投票、この投票の第三字は「き」の字を左右逆にして「」と記載せるものと認められるから、「すすき弘市」と判読できるものであつて、補助参加人の氏名と何ら相通ずるところがないから、補助参加人に対する有効投票と解することはできない。

43及び44の投票、これらの投票は第一、二字は「ヨシ」と判読できるも第三字は如何なる字を記載したるかは全く確認し難いものである。したがつて補助参加人の氏を記載せんとしたるものか或は候補者田口芳郎の名を記載せんとしたるかを判定し難く、候補者の何人を記載したるかを確認し難いものとして、無効となすべきである。

45及び47の投票、45の投票はその記載文字の稍拙劣なる点から考えると第一字「」は「員」の字を誤記したるものにして県会議員又は議員の趣旨を表示するために記載したものと認められ、又47の投票の「ケン」は「ケンギ」の誤記と認められる。しかして本件選挙と同時選挙として秋田県知事選挙が行われたことは前記の通りであるから、これらの投票は本件選挙の候補者たることを特に指示するために記載したにすぎないと認められるから、右各投票の効力を害する他事記載となすべきではない。

46の投票、この投票はその記載文字の拙劣なる点より考えると第一字は漢字を以て「吉」と記載せんとして「二」とまで記載したが、(この投票の記載者としては正確な筆順を期待し得ない)「吉」の字が頭に浮び得なかつたので、それをそのままにし、続けて「ヨシサワ」と記載したと認められ、何ら他意ある記載となすに足らないから、無効を来すものではない。

48、49、50、51の投票、48及び51の投票に記載された候補者の氏名又は氏の右下に付記されている「。」又は「、」は、その形状位置より見て普通字句を書き終つた際打たれる習慣性の句点と認められ、又49及び50の投票に記載せられた候補者の氏と名の間の「、」又は「。」は、いずれも一般の慣例に従つて氏と名を区分するために付したにすぎないものと認められる。したがつて、いずれも意識的な他事記載となすことはできない。

52の投票、この投票の記載文字は甚だ稚拙ではあるが「よしわ」と判読できるものであつて、他に「よしわ」に類似の候補者がないから、この投票は「よしざわ」の「ざ」の一字を脱落したものと認め、補助参加人の有効得票となすべきである。

53の投票、この投票は「コ一」と判読できるものである。しかして「コ一」は補助参加人の名「耕悦」の音に相通ずるところがあり、しかも「コ一」の音に類似する氏又は名を有する候補者は他に存しないから、この投票は補助参加人の有効得票と解するのを相当とする。

54の投票、この投票の記載は、その筆勢、運筆の具合等からして「吉沢耕悦」と記載したものと認められる。

55、56及び58の投票、これらの投票は、その文字の極めて稚拙な点より考えるといずれも「吉沢」の誤記と認められるから、補助参加人の有効得票となすべきである。

57の投票、この投票の第一字は明らかに「吉」と記載してあるが、第二字以下は一見して全く文字の体をなさないものである。しかし、その記載をよく注視すると、この投票の記載者は至つて文盲であるが、第二字は「澤」の字を、第三字は「耕」の字を記載せんとしたる努力の跡が窺われ、第四字は「悦」の字の「小」を中途まで記載して中止したるものと認められるから、この投票は補助参加人の有効得票と解すべきである。

59の投票、この投票は上下を逆にして見ると「コーイ」と記載してあることがわかるが、この投票の記載者は極めて文盲であつて「コーイチ」と記載せんとして「チ」を「」と誤記したるものと認められるから、補助参加人の有効得票と解すべきである。

60の投票、この投票は第一字より第三字までは「ヨシザ」と判読し得るが第四字は如何なる文字なるか判読困難である。しかしてその記載文字の極めて拙劣な点よりみて「ヨシザワ」の誤記と認められるから、補助参加人の有効得票となすべきである。

61の投票、この投票に記載された「吉沢」の下部に存する、「い」はその筆色が上部の「吉沢」に比し一段と淡く、且つその形体から見て文字を記載せんとして生じたる筆跡とは到底認められず、むしろ「吉沢」と記載し終つた際、無意識に鉛筆が投票用紙に接着したため生じた痕跡と見られる。したがつて、これを有意の他事記載又は前記知事候補古沢斐の名を記載しようとしたものとなすことはできない。

(二)  別紙第二目録記載の投票について。

1乃至6及び9乃至13の投票、これらの投票の中、3の投票は第二字は「テ」を「」と誤記したもので「タテツ」と判読でき、5の投票は明らかに「田口テ」と記載してあり、その筆跡から見て「田口チ」と記載すべくして「チ」を「テ」に誤記したものとは認められず、むしろ「田口テツゾウ」と記載せんとして「田口テ」とまで記載して中止したものと認めるのが適当であり、13の投票は「タグツテツゾウ」と判読し得るものである。原告は、これらの投票は、いずれも田口候補の通称化された家号及は家名である「田口鉄蔵」又は「田鉄」を記載したもので田口候補の有効得票であると主張するけれども、「田口鉄蔵」又は「田鉄」が田口候補の通称であることを認めるに足る証拠は存しない。却つて田口候補の家は代々「鉄蔵」の名を襲名し来り、当主の田口鉄蔵は田口候補の実父であり、同人は本件選挙の投票当日に於て本件選挙区内の角館町々長選挙の候補者であつたことは当事者間に争なきところであり、成立に争なき丙第十一号証の記載、証人山本正郎、竹下四三二、鈴木正義、菅原福蔵、宮腰吉秀、相馬明治郎、藤島栄、田口芳郎の各証言を綜合すると、田口家は前記の如く代々「田口鉄蔵」を襲名し来つたが、「田口鉄蔵」は「田鉄」と略称され、この略称「田鉄」は田口家の家号と化したこと、したがつて本件選挙当時「田鉄」という称呼は一面田口家の家号として、又他面に於ては当主である田口候補の実父田口鉄蔵の通称として、一般に使用せられていたものであり、当主でない田口候補その他の家族の一員を指称するためには使用せられていないこと、及び当主田口鉄蔵は三十年位前に「鉄蔵」名を襲名し、従来右角館町内に居住し、かつては同町町会議員の職にありしこともあり、又近時に於ても昭和二十八年九月二日より本件選挙の直前たる昭和三十年四月十九日まで同町々長を勤め、本件選挙の直後である同年五月三日に執行せられたる同町町長選挙にも前記の如く立候補したのみならず、秋田県仙北郡製材協会会長、秋田県森林組合連合会理事等の公職にある傍ら、同県仙北郡地方に於て森林経営事業に従事するなど、多方面にわたり相当活溌なる活動をなしていたものであつて、同地方に於ける所謂知名の人士の一人に数えられていたものであることを認め得べく、右認定を左右するに足る証拠はない。そうすると、これらの各投票はいずれも候補者でない田口候補の実父である田口鉄蔵の氏名又はその略称である「田鉄」を記載したものであつて、田口候補に対する投票とは認め難く、無効と解するを相当とする。

7及び8の投票、7の投票は記載明確ではないが、辛うじて「タキツ」と判読でき、8の投票は「タギヅ」と記載せられている。しかして秋田県人には「田口」を「タグツ」又は「タグヅ」と訛つて発音する人が多いことは顕著な事実であり、その筆跡の至つて稚拙な点からしてこれらの投票は「タグツ」又は「タグヅ」と記載せんとして誤記したものと認められ、他に「タキツ」又は「タギツ」に類似する氏又は名を有する候補者がないから、田口候補への有効投票と解すべきである。

14及び15の投票、これらの投票が候補者田口芳郎の有効投票となすべきことについては当事者間に争なく、当裁判所の判断も右と同様である。

16の投票、この投票は、「谷口」又は之に類似する氏の候補者がないから、「田口芳郎」の誤記と認める。補助参加人は候補者中に小山田四郎が居るから、この投票に記載された「芳四郎」は右候補者の名「四郎」を記載せるものであると主張するけれども特に「芳四郎」と記載しているのであるから、「芳郎」の誤記と認めるのが相当である。したがつて、この投票は田口候補の有効得票と解すべきである。

17、18、19の投票、17の投票は「た口ケ」と、18及び19の投票は「タ口チ」と、各判読できるものであるが、これらの投票の記載者は、いずれも至つて文字を解せないようであつて、仮名と漢字を以て「た口」又は「タ口」と記載しながら、口の第二音であるチを送仮名的に附記し又は之を附記せんとして「ケ」と誤記したものと認められるから、いずれも田口候補の有効得票と解すべきである。

20の投票、この投票はその記載文字の拙劣なところから見ると第一字は「タ」と記載すべくして中の「ヽ」を「ク」の右側に誤つて記載したものと認められ、第二字は漢字の「口」と判読でき、「タ口」の誤記と認められるから、田口候補の有効得票となすべきである。

21、23、25の投票は、これらの投票の記載は、いずれも判読困難であつて何人の氏名を記載したかを確認しがたいから、無効投票となすべきである。

22の投票、この投票の記載は「タダツ」と判読できるものであるが、候補者中に之と同一又は類似の氏又は名を有する者なく、且つこの投票の記載文字の拙劣なところより「タグチ」と記載せんとして「グ」を「ダ」と誤記し、かつ「チ」を「ツ」に訛つて「ツ」と記載したものと認められるから、田口候補の有効得票と解すべきである。

24の投票、この投票は第一、二字は「たぐ」と判読され、第三字は稍明瞭ではないが、その運筆の具合等からから考えて「ち」と判読できるから、田口候補の有効得票となすべきである。

26の投票、この投票は、いずれも「田口四郎」と明記せられているものであつて、別紙第三目録記載の1の投票につき述べるのと同一の理由により、田口候補の有効得票と認めることはできない。

27の投票、この投票は候補者中に「小山田」なる氏を有する者があるけれども、「小山田」と「田中」とは何等相通ずるところがなく、他に「田中」又は之に類似の氏を有する候補者がないから、田口候補の「口」の字を書き誤つたものと認め、同候補の有効得票と解するを相当とする。

28、29、30の投票、これらの投票は「ヨス」、「ヨスタ」、「ヨシダ」と明確に記載せられているものである。原告は28の投票は「ヨスロ」と記載すべくして「ロ」の字を脱落したもの、29及び30の投票はいずれも「ヨスロ」の誤記であると主張し、補助参加人は28の投票は「ヨシザワ」と記載せんとして「ザワ」の二字を脱落したものと主張するけれども、これらの投票は田口候補の名を誤記したものか或は補助参加人の氏を誤記したのか、その何れなるかを断定し得ないから、候補者の何人を記載したかを確認しがたいものと認め、いずれも無効投票となすべきである。

31の投票、この投票は「田口治」と記載せられているものである。原告は第三字はヨ、シ、ロの三字を一箇所にまとめて記載したものか又は「田口チ」なる記載と同様送仮名的に附記したものであると主張するけれども、その筆跡からみて到底右主張の如く認めることはできない。しかして候補者中に「田口」なる氏を称える者は田口候補のほかには存しないけれども、この投票に記載の第三字「治」は田口候補の名「芳郎」とは全然類似性がなく同候補の名を誤記したものと認め難いから、同候補への有効投票と解することはできない。

32の投票、この投票の第一字はその型体からすれば稍「リ」の字に類するが、第二、第三字の記載と比較するときは、これを文字の記載と認め難く、第二、第三字は「シロ」と記載してある。原告は右第一字は「ヨ」の字の誤記であると主張するけれども前記の如く右第一字は文字の記載とは認め難いのみならず候補者中に小山田四郎なるものが存するから、右主張は採用しがたいところであつて、候補者の何人を記載したかを確認しがたきものと認め、無効投票と解するを相当とする。

33の投票、この投票に記載された「田」の字の上部に存する相当大きい墨痕の中に鉛筆によつて山という字らしきものが記載せられていることをかすかに認めることができ、又右墨痕はその形体からして、記載文字を抹消するために生じたものとは到底認められず、不用意に墨汁が附着せるために生じたものであること明らかである。しかして候補者中には小山田なる氏を有する者があるから、この投票は結局候補者の何人を記載したかを確認し難いものとなすの外ない。

34の投票、この投票は明らかに「ヨシワ」と記載してあるものであつて、第三字は「口」の字を記載せんとして第三画を書き忘れたものと認めることは到底できない。しかして記載文字の拙劣なる点から考えると、被告並びに補助参加人主張の如く「ヨシザワ」と記載せんとして「ザ」の一字を脱落したものと認め、補助参加人の有効得票となすべきである。

35の投票、この投票に記載された「田口」の上部の「×」はその形体、大きさ等の点から考えると原告主張の如く「芳」の字の草冠の左側の「メ」を記載したものとは到底認められず、むしろ所謂「ぺけ」又は「ばつてん」と称し反対、否定、誤謬等の趣旨を表示するため使用される符号の「×」であると認められるから、他事記載と認め無効と解すべきである。

(三)  別紙第三目録記載の投票について。

1の投票、本件選挙当時、その選挙区内の秋田県仙北郡角館町内に田口四郎なる氏名の者が居住し、同人が当時同町の議会議員であつたことは当事者間に争なく、証人田口四郎、伊藤正、富木弘市、青山緑の各証言及び成立に争なき丙第十二号証の記載によれば、右田口四郎は本件選挙の選挙区内である秋田県仙北郡花館村に於て出生し、秋田師範学校二部を卒業してのち、昭和十五年頃に至るまで約十年間に亘り本件選挙区内の角館町又は大曲市の小学校教員を歴任し、昭和二十一年五月末頃より角館町に移り、爾来同町に於て藁工品、履物類等の販売業をなしたる後新聞販売業に転じたが、前記の如く小学校教員をなしていたことから、角館町附近に於ては相当数の教え子があり又教え子を通じて教え子の父兄の間にも相当広く名を知られていた関係から、同町議会議員に当選し、昭和二十六年四月二十三日より昭和三十一年三月三十一日まで右の職に就いていたものであり、此の間訴外根本龍太郎が秋田県より代議士に立候補したる際には右訴外人のため選挙運動をなしたることもあり又昭和二十五年頃選挙運動に関係し選挙違反容疑のもとに大曲検察庁に於て取調べを受けたることなどあつて、角館町附近に於ては相当広範囲にその名を知られているものであることを認め得る。右の事実に徴すると、「田口四郎」と明記しあるこれらの投票は候補者でない実在の人物である右田口四郎に投票する意思が表現されているものと認めて、無効と解するを相当とする。

2乃至10の投票、これらの投票の中、2及び3の投票は、「田口しロ」、又は「田口しろ」と記載せられおり、その余の4乃至10の投票は、仮名又は仮名及び漢字混りにて記載せられているけれども、いずれも明らかに「たぐちしろう」と音読できるもの(尤も4及び10の投票は「タグツ四郎」又は「タグツ四郎」と記載せられてはいるけれども、秋田県人には「田口」を「たぐつ」と訛つて発音する者の多いことは顕著な事実であるから右二票の氏の記載も右訛音に従つてなされたものと認められる)である。しかしてこれらの投票がいずれも前述の実在人田口四郎の住所地又はその近隣の開票区内に於ける投票であることを考えると前記1の投票につき述べたと同一の理由により、田口候補に対する有効投票とは認め得ないものである。

11の投票、この投票は、いずれも田中四郎と明記されているものであつて、候補者中に小山田四郎が存するから、田口候補の氏名を誤記したものとのみ認め難く、候補者の何人を記載したかを確認しがたいものとして、無効と解するの外ない。

12の投票、この投票の第三字は運筆の具合からみて数字の、「4」であること明白であり、田口候補の名芳郎の「芳」を「4四」(よし)と当字を以て記載したと認められるから、同候補の有効得票となすべきである。

13乃至19の投票、これらの投票の中、13、15、16の投票は、「田鉄」、「タテツ」、「たてつ」と明らかに記載してあり、17乃び18の投票は、「たてつ」又は「タテツ」の誤記であること明白であり、19の投票は「田口鉄蔵」と記載せんとして「田口鉄」とまで記載して中止したるか又は「田鉄」の誤記と認められるものである。したがつて第二目録記載の1乃至6及び9乃至13の投票の効力につき述べたと同一の理由により、これらの投票は田口候補の有効得票と認めることはできない。

20の投票、この投票の第一字は「日」の字とも見られないことはないが、その形体からみて、むしろ「田」の字を誤記したと認められ、候補者中に氏の頭字に「日」の字のつくものが存しないから、田口候補の有効得票となすべきである。

21、22、23の投票、これらの投票は、その筆跡の拙劣な点より見て「タグチ」、「田口ヨシロ」又は「タくつ」と記載せんとして誤記したものと認められるから、田口候補の有効得票となすべきである。

24の投票、この投票の第一、第二字は「タ口」と記載してあり第三字は筆跡の稚拙な点からみて「チ」の字を誤記したものと認められ、(この「チ」は「タ口」と記載した以上「チ」を附加する必要はないのにその必要ありと誤解し「チ」を送仮名のように附したもの)第四字目は「ヨ」と記載して抹消したものであること明白である。したがつてこの投票は田口候補の氏を記載したものと認め、同候補の有効得票となすべきである。

25の投票、この投票の第二、第三字は「テツ」と判読し得るが第一字は判読困難である。しかしその形体からして「日」又は「田」の字を記載せんとしたるようであるが、かりに「日」と判読しても田口候補の氏名とは全然類似していないし、「田」と判読すれば「田テツ」となるから、前述の如く田口候補の有効投票とはなし難いものである。結局この投票は何人の氏名を記載したかを確認しがたい無効の投票と認める外ない。

26の投票、この投票の第一字及び第三字は「タ」及び「チ」と判読でき、第二字は筆跡の稚拙なこと及び運筆の具合等を考えると「ク」の誤記と認められるから、田口候補の氏を誤記したものと認め、同候補の有効得票となすべきである。

27の投票、この投票は第一、第二字は「田口」と判読できるが第三字は判読困難である。しかして第三字の記載はその形体からみてこれを有意の他事記入とは認め難いから、田口候補の有効得票となすべきである。

28、29、30の投票、28の投票は候補者氏名欄の右上部に「田」と判読できる一字が記載してあるもの、29の投票は同欄の中央部に「田」と判読できる一字が記載してあるもの、30の投票は同欄上部に「〈十〉」と記載しあるが、その形体からみて「〈十〉」(まるじゆう)の記載とは認め難いものである。しかして候補者中に「田」の字のつく氏又は名を有するものは田口候補の外に小山田四郎がいるけれども「小山田」の如く三字の氏を記載するに当つて末字の「田」を最初に記載するが如きことは通常考えられないところであるから、これらの投票は田口候補の氏の頭字「田」を記載したるものと解し同人に対する有効投票と認むべきである。もつとも30の投票の記載は「〈十〉」(まるじゆう)に類似するものではあるが、「まるじゆう」の音に類似する氏名又は通称を有する候補者はないのであるから右の投票を田口候補の有効投票となすにつき何等妨げとならない。

31の投票、この投票は「タロツ」と記載せられているが「タロツ」に類似する氏又は名を有する候補者がないから、第二字は漢字の「口」と認めるのが相当であり、記載文字の拙劣なことよりみて田口候補の氏を「たぐつ」と訛つて発音する者(秋田県人は「田口」を「たぐつ」と訛ることは顕著な事実である)が「タ口」と記載せんとして語尾音の「ツ」を附け加えて記載したと認められるから、田口候補の有効得票と解すべきである。

32の投票、この投票は「タロ」と記載せられていること明白であり、候補者中に「タロ」(たろ)又は之に類似する氏又は名を有する者がない点及び筆跡の稚拙な点から見て、第二字は漢字の「口」を記載したものと認め、田口候補の有効得票と解するを相当とする。

33の投票、この投票は「た口」の誤記と認められるから、田口候補の有効得票である。

34の投票、この投票の第一、第二字は「たク」と記載しあり、第四字は「ヨ」と判読でき、第三字は稍不明であるが、その運筆の具合からみて、辛うじて「チ」と判読できるものである。したがつて「たクチヨシロウ」と記載すべくして、「たクチヨ」とまで記載して中止したものと認めて田口候補の有効得票となすべきである。

35の投票、この投票は第一字乃至第三字は「たぐち」と判読でき、第四字は判読困難であるが第五字は「う」と判読できるものであつてその筆跡の極めて稚拙な点よりみて田口候補の氏名を誤記したものと認められるから、田口候補の有効得票なること明らかである。

36の投票、この投票は明らかに「日口」と記載せられているが、候補者中「日口」又は之に類似する氏を称えるものがなく又その筆跡の稚拙な点からして「田口」の誤記と認め、田口候補の有効得票となすべきである。

37の投票、この投票は第一、第二字は「タク」と記載してあり第三字は「フ」のようにみえるが、その筆跡の稚拙な点からみて、「タグチ」又はその訛音「タグツ」の誤記と認められるから、田口候補の有効得票となすべきである。

38、39の投票、これらの投票はその筆跡の稚拙な点よりいずれも、田口候補の氏の訛音「タグツ」又は「タグツ」と記載せんとして誤記したものと認め、いずれも同候補の有効得票と解すべきである。

40の投票、この投票は第一字は極めて小さく、しかも右側に第二字及び第四字は極めて大きく、第三字は第一字と同様極めて小さく、しかも左側に「田口芳郎」と記載しあるものであつて、その筆跡の必ずしも拙劣でない点より見て無意識に右のような記載になつたものではなく、ことさらに斯る記載をなしたものと認められ且つ特に斯る異様なる記載をなすの理由を見出し得ないから、真面目に田口候補を選ぶ趣旨なるか甚だ疑わしいのみならず、一種の暗示とも解せられ、無効と認めるを相当とする。

41の投票、この投票は黒鉛筆を以て記載してあり筆跡はうすいが鉛筆の色素が附着していること明らかであるから、被告及び補助参加人の主張は当を得ない。

42の投票、この投票は「田口芳郎」と記載し、その「郎」の字の左下に「へ」と明らかに記載してあるものであつて、筆跡からみて不用意に鉛筆が投票用紙に接触してできた汚点とは認めがたい。したがつてこの投票は候補者の氏名の外、他事を記載したものと認め、無効と解すべきである。

43の投票、この投票は「日本田くちよしろ」と記載しあるものであつて、田口候補が当時日本民主党の公認候補であつたとしても右の「日本」の記載だけは到底「日本民主党」の党名の記載とは認めがたいから、他事記載として無効と解するを相当とする。

44の投票、この投票の名に当る部分の記載は明らかに「りやだる」と記載せられており、田口候補の名「芳郎」とは全然相通ずるところがないから、田口候補の名を誤記したものとは到底認めることができず、候補者でない者の氏名を記載したるか又は他事を記載したるものとして無効と解すべきである。

45の投票、この投票は「タロチ」と判読でき、その筆跡の至つて稚拙なことによりみて「タグチ」の誤記又は第一字は片仮名第二字は漢字を以て「タ口」と記載しながら「口」の語尾音「チ」を誤つて附記したものと認められるから、田口候補の有効得票となすべきである。

46の投票、この投票は、その筆跡からして第二字は漢字の「口」を記載したものと認め、「タ口サン」(たぐちさん)と判読するを相当とし、候補者中「たろ」又は之に類似の名を有する者がいないから、田口候補の有効得票と認むべきである。

47の投票、この投票は田口候補の有効投票となすべきでないことは当事者間に争なく、当裁判所も同様に判定する。

48の投票、これらの投票は、その筆跡の稚拙な点及び字体から考えると第一字は「田」の誤記と認めるを相当とし「四」と判読すべきではない。したがつて、いずれも田口候補の有効得票となすべきである。

(四)  別紙第四目録記載の投票について。

1の投票、この投票は明らかに「ヨシザワソウゼン」と記載しあるもので、「ソウゼン」は補助参加人の名「耕悦」とはその発音に於て類似性がなく「コウエツ」又はその訛音「コウイチ」の誤記とは認め難く、却つて候補者深浦宗寿の名の音に近似するから、候補者の何人を記載したかを確認しがたいものと認め、無効と解すべきである。

2及び3の投票、これらの投票は、その筆跡の稍拙劣な点及び運筆の具合からみて「吉沢」の誤記と認められ他に「土沢」又は之に類似の候補者がないから、補助参加人の有効得票となすべきである。

4の投票、この投票は文字は拙劣ではあるが「吉澤」と記載したのを縦線を以て抹消し、その右側に「イシザワ」と記載しあるものであつて、抹消せられた「吉澤」の記載が稍不明確なものであることからみて、当初は漢字を以て吉澤と記載したが自信なきため之を抹消し片仮名を以て「ヨシザワ」と書き更めんとして「ヨ」を「イ」に誤記したものと認められ、かつ候補者中に「イシザワ」又は之に類似の氏を有するものがないから補助参加人の有効得票と解すべきである。

5の投票、この投票は第一、二字は「よし」、第三字は判読困難であるが、第四字以下は「こうえじ」と記載してあることを確認し得る。しかして、その筆跡の至つて稚拙なことからみて「よしざわこうえつ」の誤記と認められるから、補助参加人の有効得票と解するを相当とする。

6の投票、この投票の記載者は至つて文盲な人と認められ、第一字は辛うじて「吉」であることを認められるが、第二字以下は文字の体をなしていない。しかし第二字をよく注視すると「澤」の字を記載せんとして努力したる痕跡を十分認め得るし、他に「吉」の字のつく氏を有する候補者がないから、補助参加人への有効投票と解するを相当とする。

7の投票、この投票の記載文字は極めて拙劣ではあるが、「吉さわ」と判読できるから、補助参加人の有効得票となすべきである。

8の投票、この投票は別紙第二目録記載の34の投票と同一であつて、補助参加人の有効得票と解すべきことは既述のとおりである。

9の投票、この投票は、明らかに「ふるさわこえち」と記載せられてあるが、「こえち」は補助参加人の名「耕悦」を訛つて記載したものと認められるから、別紙第一目録記載の8乃至の15の投票につき述べたと同一理由により、補助参加人に対する有効投票と解すべきである。

10の投票、この投票はその記載文字の拙劣幼稚な点からみて「よしざわ」の誤記と認められ他に「よしため」又は之に類似の氏又は名の候補者がないから、補助参加人の有効得票となすべきである。

11の投票、この投票は第一字は「吉」と記載せられているが第二字は判読できない。しかし、その筆跡の幼稚なる点からみて、この投票の記載者は「吉澤」と記載せんとしたが、「澤」の字を記載し得なかつたものと認められ、他に「吉」の字のつく氏又は名の候補者がないから、この投票は補助参加人へ投票する意思が明らかなものとして、同人の有効得票と解すべきである。

12の投票、この投票は、その記載文字の拙劣な点からみて、第一字は「ヨ」の誤記、第三、第四字は「ザワ」の誤記と認められるから、補助参加人の有効得票と解すべきである。

以上判断したところに基ずき候補者田口芳郎及び補助参加人の得票数を計算すると、候補者田口芳郎の得票数は六、二二四票であつて補助参加人のそれは六、二四五票であること明白であるから、補助参加人を以て最下位当選者、候補者田口芳郎は最高位落選者となし、原告の異議申立を棄却した被告委員会の前記決定は結局正当にして原告の本訴請求は理由なきを以て之を棄却すべきものとする。

よつて民事訴訟法第八十九条、第九十四条後段を適用し、主文の通り判決する。

(裁判官 浜辺信義 松本晃平 兼築義春)

(別紙省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例